コロナの影響で海外から外国人選手を招聘することが規制されたりすることで日本人同士の好カードが増えた事は喜ばしいのですが、反面、世界を見据えた選手が前哨戦的に行う試合がまったく見られなくなってしまった弊害もあります。
例えばフィリピンだけでなくメキシコやベネズエラ辺りからの世界ランカーや元世界王者とのマッチアップ。日本人とは違う独特の間合いやタイミング、試合運びから醸し出す雰囲気まで、島国育ちの日本人に海外とはこういうものだと認識させる機会が減ってることに不安が募ります。
井上尚弥や中谷正義みたいに本人やジムの力で海外で試合が出来る選手は別として、近い将来に世界戦が期待される選手に然るべきタイミングでの国際戦が無いことは不安材料になると思います。
いわゆるチャレンジマッチが行われないことの弊害は大きいかな。
1.ピューマ渡久地vsヘスス・ロハス(93・4・21後楽園)
※本来はブランク明けの渡久地にはカマセを当ててスカッと爽やかなKOを献上するマッチメイクが望まれたのでしょうが、意に反して相手は難敵ロハス。独特のタイミングのジャブやアッパーで切り刻まれてのTKO負けを喫した渡久地ですが、当時の自身の立ち位置を図るのには良かったのかも知れません。
2.坂本博之vsファンマルチン・コッジ(95・5・6後楽園)
リック吉村、桑田弘とKOして国内で無双しかけてた坂本に待ったをかけたのは元世界王者のコッジでした。独特のタイミングで放たれるラティゴ(鞭)やボディでプロ初のダウンを喫しながらも、歯を食いしばって耐え抜いた坂本はこの敗北で得るものもまた大きかったはず。
3.辰吉丈一郎vsアブラハム・トーレス(91・2・17後楽園)
プロ・デビュー以来、5連勝の辰吉が初めて味わった挫折かもしれない。チューチャード・エアウサンバンやサムエル・デュランなどタイやフィリピンの選手と早い段階で拳を交わせてはいたものの、南米系はおそらく初めてだったので戸疑いもあったはず。
トーレスの長いリーチから繰り出される独特の左ジャブ、柔らかいボディワークに苦戦。忖度された様な判定で引き分けに持ち込んだ辰吉はこの試合の後、パショネス相手にキャリア、裏ベストバウトといえる見事なアウト・ボクシングを披露し、8戦目のグレッグ。・リチャードソン戦ではリチャードソンの左を凌ぎ世界を奪取するに至ったのはご存知の通り。ただ欲をいえば眼疾に繋がる様なダメージを被る試合にはして欲しくなかったな。
4.渡辺雄二vsマルコス・ゲバラ(93・8・30東京体育館)
※残念ながら動画無し。
デビュー以来10連続KO、7戦目で日本王座獲得、10戦目で元世界王者をアッサリKO葬とイケイケドンドンの勢いを見せた渡辺が初めて味わった挫折が世界王者ヘナロ・エナルンデスへの挑戦→完敗。
その再起戦が自身と同等のランクを持つベネズエラのゲバラ、だったわけですが、結果はジャブで顔面を切り刻まれてTKO敗退。
この後、OPBFの2階級制覇を成し遂げてはいたものの、2度目の世界挑戦が実らなかったのは残念。
かっての日本のホープの壁となったのは南米のボクサーでした。
アジア圏の選手と異なる、独特のタイミングや避けたと思う所からもう一伸びしてくる左ジャブ、ジャブと同じタイミングで放たれるアッパー、変則ともいえるリズムのコンビネーション、精緻なステップ・・・
この壁をクリアしたものが挑むからこそ世界戦は崇高な場と成りえました。
コロナ禍の現在ではやむを得ないですが、今だからこそ南米の選手と拳を交えて、筋金を入れて欲しいボクサーはたくさんいます。
また、そんな時代にならないかなぁ。