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Channel: リングサイドで野次を聞いた ~独善的ボクシング論
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耐えて忍んで・・・

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土曜日に仙台で行われた2大世界戦をようやく観終えました。以下、採点に関しての個人的な見解をつらつらと述べて行きます。



木村vsゲバラは微妙な判定でしたが、許容範囲かな。私的採点は116-112でゲバラなのですが、7,8,12の3つのラウンドを迷いながらもゲバラに振ってしまっており、これが木村に全部振り分けられれば115-113で木村になります。公式では115-113×2人が木村、117-111がゲバラでしたね。
1~5Rまでは明確にゲバラ。6R以降は前述の様に3つのラウンドが微妙だったのですが、6、9、10、11と4つは木村で振り分けてもいい内容だったと思います。ただ、ゲバラが獲った1~5Rと比べると木村が獲ったラウンドは差が明確と言い難い部分もあり、一つでもイーブン、またはゲバラに微差で振り分けると木村の勝ちの目は薄くなります。
そう考えると山中vsモレノよりも微妙に接近した内容での勝利ということで(地元判定と言う意味でなく)運なども総動員したうえでの勝利と観ることも出来ます。(私は山中vsモレノは最悪でも引き分け、山中の負けは無いという見解なので)

ゲバラは思った以上に一発一発を丁寧に強く、振って来るタイプですし、ボディが余り強くない事も相まって後半の失速、特にハンド・スピードの欠落は想像以上でした。ホセ・アントニオ・アギーレが晩年、負けるときにこんな状態に陥ることが多かった様な気がします。
八重樫戦や防衛戦ではいいところしか目立たなかったので意外な弱点を露呈した感じでしたね。

木村も後半勝負という戦略を忠実に実行したことと、打ち終わりを狙うカウンター(右クロス)などのタイミングの良さなどもあり、日本王者時代以上の積極策が奏功しました。しかし、今回はゲバラが好戦的だったことと自身の待ちの戦略が噛み合ったという相性の良さに助けられた割合も大きく、本当の勝負は防衛戦以降だと思います。田口と比較してどうなんでしょう?





次いでクァドラスvs江藤光。この試合も前半5Rまではクァドラスが明確にリード。
まあ採点が117-111×2人と116-112で3-0でクァドラスなのでこの試合は木村の試合とは逆に王者側の先行逃げ切りという感じかな。
江藤のボディや右などでクァドラスがピンチになることもありましたが、シーサケットやルイス・コンセプシオンなどとの強敵相手の凌ぎ合いを制してる王者からすると想定内だったと思われます。公開採点の特色もありますが、8R終了時点で倒さねば勝てないことは明白だっただけに、逃げ切り態勢に完全に入る前のクァドラスを完全に捕えきれなかったのは残念。
単に強打者というだけでなく、相手によっては足を使っての試合も使い分けることが出来るクァドラスと比べると江藤はまだ一本調子に思います。攻撃力の部分では江藤の方が勝ってる部分も見て取れるだけに、後半に王者が出てこざるを得ない状況を作れなかったのは残念。今回は善戦以上のものが求められていただけに尚更そう思いました。

日本人は昔から世界戦では概して後半勝負の傾向が強く、そのままズルズルとペースを握られて、一か八かの玉砕というパターンが多かったのですが、今回もその流れを踏襲してる印象を受けました。
勿論、80年代、90年代の世界戦での敗北パターンと比べれば、より戦略的になり、よりフィジカル面でも強化されているので後半逆転というケースは増えてきましたが、前半を押えておくことは試合のイニアチブを取る上で非常に重要ではないのかなと思います。
耐えて忍んで・・・というのは良くも悪くも日本人的ではあるものの、井上尚弥みたいに強打で出端を叩いたり、内山みたいに左で試合を最初からコントロールしていける様に先手を取れる王者ほど安定感が強い様に見えます。
世界王者がインフレ化してるこの時代だからこそ、王座獲得はゴールでなく、あくまでもスタートに過ぎないので、一か八か的な刹那的な試合でキャリアを終える様な愚だけは犯さないで欲しいものです。

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