村田がロブ・ブラントに敗れ、ミドル級の世界王座から陥落しました。
世界王座の権威失墜が言われて久しいですが、やはりミドル級、実質第二王座とはいえ、この階級で勝ち続けていく難しさを感じましたね。
試合前には東京ドームでゴロフキン戦などと謳う報道もありましたが、それどころではなかったということです。
これはエンダム以外に名の知れたミドル級戦線と拳を交えて来なかったからではないかと思います。例え、五輪金メダリストであってもプロで世界を戦っていくのはちゃんとした段階を踏んで経験を積ませていくことの重要性を認識させられました。
さて、村田がある意味、優良亀路線(実力差がある相手が大半だが、相手の戦意が高くガチであること)を敷いて育成されたのは、
①五輪金メダリストのバリューによって負けさせられないとの判断。
②20代後半でのデビューだったので駆け足で育成させること。
③電通やフジのイメージ戦略。クリーンで負けないことの優先。
等の大人の事情が複数交錯したからでないかと。
デビュー戦は世間だけでなく、ボクシング・ファンをも納得させなければいけないので当時、現役のOPBF王者である柴田明雄と戦わせたのですが、2戦目からは豪州やメキシコ、ブラジルといった国からの中堅の外人を招いてのマッチメイクでエンダム戦まで凌ぎます。
やはり惜しむらくは当初の予定では2戦目では湯場忠志、3戦目では石田順裕との路線が敷かれていたのが反故になったこと。
外人相手の路線はいつでも舵が振れるのですが、湯場や石田はキャリア的に第一線の力を残していた最後の時期。要は勝ち負けの興味が出てくるのはこの機を置いて他になかったわけで、村田に希少な経験を積ませるよりも、別路線を選んだ陣営には少なからず失望したものです。
ま、ある意味で売り出しをコーディネイトしてた電通らしいとも思ったものですが。
複数企業とのCM契約、試合解説、自伝出版等、村田のリング外の活動は電通の取り仕切りがあるにしろ、スマートだ。リング内では雄弁だが、リング外の広報活動や自己プロデュースがサッパリというボクサーが多い中でその切り盛りは如才無い。
しかし、リング上ではどうだったのか。本当に勝負に出たのはデビュー戦の柴田戦とエンダムとの2戦位では無いのか。今までリング上で楽をしてきたとは言わないが、勝敗予想が拮抗する様なヒリヒリする相手とほとんど拳を合わせていないのが現状だ。そのツケが今回回ってきた様に思うのは気のせいだろうか。
ここで引退という選択もあるかも知れないが、それではプロのリングで村田は本当に自分のために戦ってきたと言えるのか。家族のため、生活のため、スポンサーや電通、フジテレビ、所属ジムのためではあったろうが、自身が燃焼する様な試合をしてきたという自負はあるのだろうか。
むしろ、タイトルというしがらみが無くなったことで、もっと奔放なマッチメイクを組んでもらって自分のための試合をしてもらいたいという気がする。ピンチの今がチャンスなのかも知れない。