今更ですが、長く言い伝えられてた事柄が実際に映像を見るとまったく印象が異なることがあります。
藤原敏男vs西城正三に関しては長年、西城が蹴られまくって場外逃避→試合放棄でTKO負けという展開が信じられてきました。
ネタ元は梶原先生の「四角いジャングル」。
しかし、藤原敏男の過去の試合の映像が市販されたときにこの試合も含まれており、初めて見た時に違和感を感じました。
思った以上に西城が善戦してたこともあると同時に最後の終わり方がどうにも解せない。自分から試合放棄して逃げた様に見えない。藤原がコンビネーションで攻め立てていたのですが、さりとてダウンでもなく、止める程のダメージもまだ見て取れずにセコンドがタオル投入。
投げたのは西城の兄らしいのですが、しばらく西城陣営に混乱が続く、背広姿の関係者と兄が揉め、兄弟同士で掴みあう様な場面も。
何とも違和感を感じる終わり方です。
さて、ボクサーvsキックボクサーinキックボクシングで話題になるのは①ボクサーのローキックへの耐性②キックボクサーのパンチの質では無いでしょうか。
この観点から印象や思ったことを述べますと・・・
①西城のローキックへの耐性
藤原が全体的に有利だったのは否めませんが、ローキックで腰砕けになる様なシーンも無く、少なくとも魔娑斗と戦ったビンス・フィリップスや大東、鈴木悟みたいな事にはなってないので彼らよりはキック・ボクシングに馴化してるなと思いました。
②藤原のパンチ
パンチに関してはどうか。当たり前ですが、競技に特化した打ち方をしたのは藤原であり、蹴りや首相撲へ繋げるため、またはそれから繋がってからの攻撃として使っていて、パンチはパンチとして単体で使ってる西城とは当然、有効度で差があります。
距離が遠いので、国際式の名残で脇を絞った西城のパンチは届きません。
一方の藤原はどうか。遠い距離から身体ごと叩きつける様に打つパンチはかなり当たる。勿論、蹴り等と連動させての打ち方であると同時に大きく放り出してもバランスを崩さない体幹の強さがあってこそだが。
そして、更に差を感じたのは組んだときの力の違いです。
打倒ムエタイのために大学のレスリング部にまで出稽古に赴いて首相撲対策をしてきた藤原とボクシング競技内でのクリンチワークに終始した西城とでは打撃競技内でのグラップラーとしての能力が違う。
逆に藤原は首相撲を制限、または禁止したK1系のルールでは意外と持ち味が減じられるのではないかと思いました。それでも十分に強いでしょうけど。
西城が藤原戦後もキックを続けてたらどうなったかはわかりませんが、一度、固まった技術を解きほぐすのは難しいと思うので、やはりこの辺りがピークでしょうか。ただ、藤原以外の日本人とはもっと競った試合が出来たでしょうね。
一方の藤原も一時期、ヨネクラに出稽古に行った際に国際式転向を進められてただけに本当に転向したらどうなったのか?
歴史のIFを考えると夜も眠れません。