粟生の怪我によりガマリエル・ディアスとの再戦がキャンセルになりました。
今年は5月のレイムンド・ベルトラン戦でもベルトランの体重超過、違反薬物使用等があったにしろ一度はKO負けを宣告される憂き目にあってるだけにここで何とか厄落とししてもらいたかったわけですが何とも残念です。まあ振り返って見ればディアスとの初戦で王座陥落してからのケチの付け始めだった気がしますが・・・
さて、今から10年前の2005年。PRIDEやK1など後発の新興格闘技に押され気味だった我が日本ボクシング界で二人のホープが注目されます。
「西の亀田、東の粟生」というキャッチ・フレーズは当時、良く耳にしてたフレーズだった記憶があります。片や関西出身で赤井や辰吉の系譜を意識したかの様な派手なパフォーマンスを売りにして話題を呼んだ亀田興毅。こなた高校生アマ6冠という正当なエリート路線を継承して名門、帝拳からデビューした粟生隆寛。当時の業界の希望は10年経ってどうなったのか?悪意を持って(笑)検証していくのもいいかと思います。
1.2005~2006年
※まず、この時期はボクサーとしての地固めを行う粟生と比較すると、亀1のジェット・コースターの様な浮き沈みの激しさが目立ちます。2005年3月に古巣であるグリーンツダから協栄へ移籍したあの一家に早くもトラブル・メーカーとしての芽が見て取れます。負け越しタイ人相手に連勝を続ける1に対して、弱くてもいいから日本人とやらせようとしたジム側に親父が反発しての移籍らしいですね。勿論、金銭的なトラブルもあったのでしょうけど。
しかし、この時期は世間を味方に付けるパワーが亀田兄弟にありました。出来レースと見紛う様にアッサリと協栄への移籍が完了するとワンミーから東洋獲得、その前後に引退してたサマンや体格差があるアランブレッドから勝ち星を積み重ね、日本王者内藤からの対戦要求は当然、無視。いろんな企業がスポンサーに付き、ローソンからは亀田弁当まで出ましたね。まさに我が世の春。しかし、万全を期したはずのファン・ランダエタ戦で手痛いしっぺ返しを食らうことになります。まさに因果応報。
一方の粟生は日本人以外に中南米の選手とも対戦して経験値を上げていきます。中にはフランシスコ・ディアンソ戦みたいな拙戦に涙したりもしてたみたいですが、まずは日本王座挑戦へボクシング・ファンの期待が高まっていきます。世間の注目は無かったですけどね・・・
2.2007~2009年
※この時期の亀1は泡沫的に上昇した株価の如く、その暴落も半端無かったです。もとよりコアなボクシング・ファンには嫌われてましたが、ランダとの試合を通して世間でも悪役(ヒール)として名を成していくことになります。2の世界初挑戦時の反則示唆、嘘っぱちの謝罪会見。
内藤戦を辛うじて制して2階級制覇を達成したものの、一度下落した流れは変わりませんでした。(リーゼント・ナックル疑惑も未だに根強いし。)
さて、粟生は日本王座獲得→榎との東洋、日本のWタイトル戦実現、ラリオスから2度目の挑戦で世界戴冠と初防衛戦の陥落。それなりにキャリアが花開いてきた様に見えましたが、榎戦やエリオ・ロハス戦みたいにモヤモヤした試合も増加してきた印象です。試合によっての出来不出来の差がこの頃から顕著になってきた様に思います。
3.2010~2013年
※亀1はポンサクレックに惨敗してフライ級王座を陥落すると、引退したムニョスを引きずりだしてバンタム級王座決定戦を行う暴挙。そして日本初の三買級・・・おっと三階級制覇を成し遂げます。そして8度の防衛戦と数字だけは立派なのですが、中身は噴飯もの。さらにモレノとの対戦から逃げる様に王座返上。そして2の負けても防衛問題により、日本追放になります。
他方、粟生。Sフェザーへ階級を上げて2階級制覇を達成しましたが、ここでも試合の出来ムラが激しかったですね。戴冠戦だったタイベルト戦やV1のグチェレス戦、V3のターサク戦は出色の出来だったのに、V2のボスキエロ戦や王座陥落したディアス戦などはそりゃ、本田会長も激怒する様な内容だったわけで・・・
4.2014~現在
※日本で試合が出来なくなった1は河野への対戦に拘り、数多の反発を跳ねのけて今年の10月にシカゴで挑戦を実現しましたが結果は惨敗。そして試合後の引退表明でようやくリングから去ることを明らかにしました。多くのファンが胸をなでおろしたことでしょう。2Rにボディを効かせたことをことさらにアピールする負け惜しみは言うものの、勝者への称讃は一切無し。せっかくのチャンスであってもローブローを打てばそりゃ止められます。ボウチャン戦から進歩してないまま偽りのキャリアに終止符が打たれました。かすかな希望も10年経てば悪夢ってコントでした。
そして粟生ですが、ここ数年は苦闘も続いてます。実力差のある相手にはキッチリとKO勝ちを収めたりしてるし、サルガドなどにも勝ち星を得てますが試合自体に感じる消化不良感は拭えません。そしてベルトランとの無効試合には同情すべき余地はあるものの、規定体重におさえて薬物不使用のベルトランに勝てるのかと言われるとちょっと心許ないところもあります。
やや消化不良を感じさせながらもまだまだ粟生のキャリアは続行中です。ボクサーの評価は引退してからすべきとはジョーさんの著書での言葉ですが、10年前に感じてた期待からするとまだまだ成し遂げるべきことはたくさんありますので頑張って欲しいものです。