5月19日はボクシングの日です。
言うまでもなく白井義男が日本初の世界王者になったことを記念してのものですが、拳闘から近代ボクシングに移行した日とも言えるでしょう。
戦前の日本のボクシングは一言で言えば「打ちし手やまん」。
攻撃は最大の防御なりで下がることを許されず、被弾構わず手を出し続ける総ファイターの時代。ピストン堀口に代表されるそのスタイルは頑健なタフネスとスタミナを必要にしており、戦前・戦中の軍国主義の思想も相まって当時の日本人の琴線を捕らえたのでしょう。
そこにアルビン・カーン博士が持ち込んだのは科学。
相手の攻撃を食わず、自分の攻撃をより効果的に当てていくスタイル。白井義男に代表されるナチュラル・タイミングはボクシングを画一的な拳の戦いから更に進化させた姿を見せました。
ボクシングの日の本来の意味は白井義男がカーン博士の教えを実践して世界を獲ることにより、日本のボクシングに近代化を呼び込んだことだと改めて思います。
そして矢尾板、海老原、沼田、小林・・・とスピードとテクニックに秀でた近代的なボクサーが輩出されることになるわけです。
ファイティング原田は手数重視、攻撃特化という点でピストン堀口を想起させるものの、出入りの速さ、常に一か所にいないポジション取りなどが戦前のボクシングとは一線を画します。
また、そうでなければポーンは勿論、ジョフレを二タテにすることは出来なかったはずでしょう。
戦後も日本のボクシングは進化を続けます。
80年代はパワーの時代。筋力トレーニングの導入もあってか、ポパイみたいな体躯のボクサーも目立ちました。
90年代にはコンビネーションが高速化され、試合のスピードアップが顕著になります。
00年代は従来のブロックとフットワーク主体の防御に精緻なステップで巧みに距離やタイミングを計る選手が出てきました。
そして2010年、2020年代と時代が進み、MONSTER井上尚弥の様な突然変異の怪物も出現するに至ってます。
世界王座獲得は一つの証明。日本で拳闘からボクシングへの進化が正式に成された記念日だからこそ、歴代の王者におもいを馳せたい。(言うまでもなくアレらは除外)